遺言書が持つ効果 -財産を分けるときの指針になる‐
遺言書が書かれていたら何が違う?
亡くなった方が遺言書を残しているのと、残していないのとでは何が違うのでしょうか。
まずはじめに、遺言書と遺書とエンディングノートの違いを見ていきます。
「遺書」は一般的に、死んだ後に伝えたい言葉を書き記しておくものです。
そして、伝えるのはその人の人生において重要だった人たちです。感謝の言葉であるかもしれないし、
恨みの言葉かもしれません。
よく書籍で、「○〇の遺言」というものが出版されているので、
法的な効果がある(行政書士が業務としている)遺言書の作成の遺言と混同されるケースが
多いかと思います。
「エンディングノート」は2010年頃からよく耳にすることが増えてきました。
終活をする際に役に立つノートです。形式は決まっていませんが、一般的には
介護・医療・葬儀・お墓・相続について書き込む欄が用意されています。
他に自身の情報や、自分史を書く欄があります。
そして、「遺言書」は上記2つとは違い、法的拘束力があります。
ただし、遺言書にかける事は法律で決まっているため、何でも書けるというわけではありません。
主に、財産の処分を指示したり、遺言書の内容を実行してもらう「遺言執行人」を指定しておいたりします。
書く時期としては、それぞれですが、揉める可能性を感じたときや、子どもにすすめられたとき、
定年を迎えたときや、家を購入したとき、
または相続人が変更したときなどに、書いたり更新したりします。
遺言書がないとき財産はどうやって分けるか
遺言書がない場合は、法定相続分にのっとり分けることになります。
上の家庭の場合を例にとってみます。
本人(40)が亡くなったとします。
すると相続人は、配偶者(35)と長男(8)と長女(5)の3人です。
それぞれの相続分は、4分の2、4分の1、4分の1です。
次に、仮にこの夫婦に子どもがいなかったとしたら、相続人は
配偶者(35)と父(70)と母(68)です。相続分は、それぞれ6分の4、6分の1、6分の1です。
そして、子どもも両親もいない場合は、相続人は配偶者(35)と妹(38)です。
相続分は、4分の3と4分の1です。
上記の相続分の割合をもとに話し合うことになります。
では遺言書が書かれていた場合は?
もし、本人(40)が遺言書を残していた場合、法律で決まっている上記の相続分よりも、
遺言書に書かれている内容が優先します。
遺言書に書かれている通りに財産を分けます。
ただし、相続人全員が合意したときは、遺言書通りではなく
話し合いをして決めていきます。
上の図の家庭の場合、仮に本人(40)ではなく
父(70)が亡くなったとします。
子ども2人に対して、平等に分ける財産があるとしたとき、
一緒に住み介護をしていた子どもと、あまり顔を出さない子どもがいる場合や、
片方の子どもにだけ、家の新築費用を出している場合などは
遺言書により平等に調整する必要性も出てきます。
均等に財産を分けれない場合や、相続人の1人が特に介護などで身を費やしてくれた、
はたまた、相続権の無い長男のお嫁さんが面倒を見てくれたので、財産を分けたい場合などは
遺言書を作成しておくべきです。
法律で決められた相続分と、異なる割合を指定した場合は
その理由を※付言事項として残すか、エンディングノートに書いておかないと
遺恨が残る可能性があるので注意が必要です。
※付言事項とは、遺言書内につけ加える言葉です。法的な効力はありませんが、書いてあるのとないのとでは、遺言書の印象が違ってきます。
遺言書は財産を分けるときの指針となる
遺言書が書かれていたけれども、その通りにしたくないと相続人全員が思い、
話し合うことになった場合でも、遺言書により亡くなった人の意思は伝わります。
それを指針として財産を分けることができます。
ゼロから話し合うのとでは、遺言者の意思が伝わっているぶん、
話し合いをまとめるための精神的な負担が違ってくるだろうと思います。
遺言書だけではなくエンディングノートなども使えば、受け取る側に意思が伝わり
より良い財産の承継ができる事と思います。